交通事故示談の時効期限と延長の条件
交通事故による損害賠償請求権は、放置しておくと時効によって3年で消滅します。
損害賠償請求権は原則として民法709条(そのほか自賠法3条等もあります)に基づくものだからです。(民法724条)
この「3年」といっても、事故で受けた被害内容によって「3年」のスタート時点が異なることになります。この時効のスタート時点のことは「起算点」といいます。
一般的な時効の起算点は以下のとおりです。
- ①死亡の場合
- 死亡日から3年
- ②怪我の損害
- 事故日から3年。ただし、治療費の支払等で承認がなされているのが通常。詳細は後述。
- ③後遺障害の損害
- 症状固定日から3年
- ④物損
- 事故日から3年
示談交渉が長引いた場合、後遺障害等級認定に時間がかかった場合等、様々な事情があって損害賠償請求権が時効寸前となるケースも散見されます。そのため、時効が迫っている場合には早急に時効を中断する手続が必要になります。
なお、一般的には治療費を保険会社が立て替え払いしていることは債務承認とみなされるので、治療費支払を継続しているうちは時効にはならないと考えられています。
時効を延長するための手段について
時効は3年ですが、この3年間が経過してしまいそうな時は、時効を中断するための方法が法律上定められています。(民法147条)交通事故の場合には、①相手方に承認してもらう②請求を行う、というのが一般的です。
①承認とは、文字通り債務の承認を認めることです。
「債務が存在することを認める」という内容の文書にサインすることはもちろん承認に当たります。時効寸前の場合には、そのため、相手方本人または保険会社に、時効は主張しません、という趣旨の文書にサインしてもらうということが考えられます。
それ以外にも、行動内容で承認とみなされるものがあります。具体的には治療費の立替払、休業損害の支払、交通費の未精算分の支払をすることは、債務の存在を前提とした行動なので、債務承認であると考えられます。そのほか、賠償案の提示等、損害賠償請求権の存在そのものを前提とした行動は原則債務承認とみなされ、時効中断事由となります。
②相手方がそのような文書にサインしない場合には、請求手続を取ることになります。
法律上、請求というと訴訟提起、すなわち裁判をするということになっており、一般的な請求という言葉と異なります。
しかし、いきなり訴訟を提起しなければならないのはハードルが高いので、請求書を送付するか、口頭で支払えと督促することで時効を半年延長することができます。この手続を法律上は「催告」といいます。この催告による時効延長は1回のみで、繰り返し送付して半年ずつ延長させることはできません。
いずれにせよ、時効が真際に迫っている場合には、請求書を内容証明郵便で送付して一旦時効を半年延ばし、その間に訴訟の準備をするのが一般的です。
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