高次脳機能障害とは

高次脳機能障害とは
自賠責保険の後遺障害等級認定制度において「脳外傷による高次脳機能障害」と呼ばれるもので、脳外傷があり、意識障害が一定期間継続した場合に発生する後遺障害であって、認知障害(記憶の障害等)とともに人格障害(性格変化等)が認められ、仕事や日常生活に支障を来す障害と定義されます。

わかりやすくいうと、交通事故で脳挫傷等のケガを負い、治療が終わって外見上は回復したように見えるのに、「怒りっぽくなった」「集中力がなくなった」「言葉が出ない」「新しい道を覚えられない」といった症状が現れ、日常生活を支障が出ている状態をいいます。

これは脳が傷ついたことで、精神機能に影響が出ているのです。

高次脳機能障害(自賠責保険)の判断

ただ、精神機能に対する障害は外部からはとても判断が難しいです。
そこで、自賠責保険では以下のどれか1つにでも当てはまる場合は、「高次脳機能障害が問題となる事案」(特定事案)として、専門部門が調査することとなっています。

1.初診時に頭部外傷の診断があり、頭部外傷後の意識障害(半昏睡~昏睡で開眼・応答しない状態:JCSが3桁、GCSが8点以下)が少なくとも6時間以上、もしくは、健忘症あるいは軽度意識障害(JCSが2桁~1桁、GCSが13~14点)が少なくとも1週間以上続いた症例
2.経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害、脳挫傷(後遺症)、びまん性軸索損傷、びまん性脳損傷等の診断がなされている症例
3.経過の診断書または後遺障害診断書において、高次脳機能障害を示唆する具体的な症例(※)、あるいは失調性歩行、痙性片麻痺など高次脳機能障害に伴いやすい神経徴候が認められる症例、さらには知能検査など各種神経心理学的検査が施行されている症例
※記憶・記銘力障害、失見当識、知能低下、判断力低下、注意力低下、性格変化、易怒性、感情易変、多弁、攻撃性、暴言・暴力、幼稚性、病的嫉妬、被害妄想、意欲低下
4.頭部画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3か月以内に脳室拡大・脳萎縮が確認される症例
5.その他、脳外傷による高次脳機能障害が疑われる症例

高次脳機能障害が疑われる症例

  1. 頭部外傷の診断により意識障害が発生
    脳挫傷、び慢性軸策損傷、び慢性脳損傷、急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、脳室出血等
  2. ②後遺障害診断書に脳挫傷び慢性軸策損傷び慢性脳損傷の診断
  3. ③以下の症例がみられる
    • 記憶障害:物の置き場所・新しいできごとを覚えていられない。何度も同じことを繰り返し質問したりする。
    • 注意障害:ぼんやりしていて、何かをするとミスばかりする。また物事に集中できず、すぐに飽きてしまう。ふたつのことを同時にしようとすると混乱する。
    • 人格障害:性格の変化
      性格変化、易怒性、感情易変、多弁、攻撃性、暴言・暴力、幼児性、被害妄想、意欲低下
    • 遂行機能障害:ものごとを目的に合わせて適切にやり遂げることができない。ひとつひとつ指示してもらわないと何もできない。物事の優先順位がつけられず、いきあたりばったりの行動をする。
    • 失語:運動失語(言語理解はできるが自発言語が発せない)・感覚失語(自発言語はできるが相手の言語を理解できない)
    • 失行:運動失行・観念失行・着衣失行
    • 地誌障害:新しい道を覚えられない、よく知っている道で迷う
  4. CT・MRIの画像上、初診時の脳外傷が明らかで、少なくとも3ヶ月以内に脳失拡大脳萎縮が確認される
    ※脳室拡大や脳萎縮は受傷から1~数ヶ月で発症します。受傷直後のCT・MRIと比較して脳の体積に減少が見られれば、損傷を立証したこととなります。

上記の事情がある場合は、外形上のケガのみでなく、高次脳機能障害についても、逸失利益・後遺障害慰謝料・介護費用等を請求すべきです。

高次脳機能障害の後遺障害等級(自賠責保険)

高次脳機能障害の後遺障害等級が認定された場合、その症状により以下の等級に該当します。

◎介護を要する後遺障害

等級介護を要する後遺障害症状・判断基準自賠責保険金額労働能力喪失率
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの。4,000万円100/100
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの。3,000万円100/100

◎後遺障害

等級介護を要する後遺障害症状・判断基準自賠責保険金額労働能力喪失率
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの自宅周辺を一人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの。2,219万円100/100
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため、一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの。1,574万円79/100
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの。1,051万円56/100
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの。616万円35/100

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